「建築設備と配管工事 2017年8月増刊号」
省エネと両立する建築設備の快適性について、様々な角度から紹介している。
特に個人個人で異なる快適感に対応するタスクアンビエント空調について、さらに近年ではこの狭い範囲の環境制御を積極的に個人に解放することで、自己調整による満足度の向上を狙ったものも登場しており、個人環境制御を可能にする技術についても紹介する。
◆変わりゆく熱的快適性のかたち/東海大学/中野 淳太
ZEB時代に向け、快適性のあり方の見直しが求められている。利用者が受け身の意識になってしまうと、空調に対する不満の解消は難しい。建築・設備・ひとの関係性をデザインし直し、利用者が自ら環境に適応しやすい状況を整える温熱環境計画が重要である。
◆ヒューマンファクターと建築設備/首都大学東京/永田 明寛
ヒューマンファクターを考慮したデザインとは、建物内の多様性に対する配慮の一つといえる。本稿では、建築設備を環境制御システムとして捉え、環境要素別に、(1)制御目標、(2)負荷要素、(3)観測、(4)操作に分け、ヒューマンファクターを例示した。
◆快適と省エネを両立する建築設計/明治大学/樋山 恭助
パッシブデザインを効果的に実現するには、建築設計の計画初期段階における検討(配置、平立面、ファサード等)が重要な意味を持つ。本稿では、省エネと快適性を両立する建築設計の課題と方法論に関して、設計担当者間の意思疎通を促進させる評価尺度の例示を通して解説する。
◆クレーム発生のメカニズム/工学院大学/野部 達夫・鵜飼 真成
空調のクレームはネガティブ情報であるためなかなか研究対象とならなかったが、2007年に筆者等が発表した某オフィスにおける調査では、圧倒的に女性からが多く、男性の12倍であった。このマイナス評価であるクレームの発生メカニズムを本稿で一部紹介する。
◆多様性に着目した人にやさしい空間/(株)竹中工務店/高橋 祐樹
居住者の"ウェルネス”を志向する建物においては、自然からの適度な刺激をポジティブに捉え、生活空間に多様な環境を構築することが求められている。およそ10年前に立ち上げた「人にやさしい空間」の研究と称するプロジェクト、特に自然がもつ「リズム」と一人ひとりの「多様性」に着目し、それを建築に取り入れる研究を本稿で紹介する。
■オフィス家具と一体化したタスクアンドアンビエント空調の設計事例と性能評価/(株)日本設計/柳井 崇・佐々木 真人
ワークプレイスにおける、よりきめ細かな環境制御が可能な空調システムのニーズに応える目的で導入した、オフィス家具と一体化したタスクアンドアンビエント空調の設計事例に関して、そのシステムの特徴や実運用を通しての性能検証の結果を報告する。
■タスク/アンビエント空調とコアンダ空調/鹿島建設㈱/弘本 真一・加藤 正宏
個別分散型パッケージと空冷HPチラー +外調機を併用した方式であり、ベース運転を中央方式(=アンビエント)、間欠運用を個別方式(=タスク)と位置付けた。外調機の吹出しは天井面付着噴流(コアンダ効果)を利用したダクトレス空調方式を採用している。
■人検知制御技術を用いた床吹出しパーソナル空調「T-Personal AirⅢ」/大成建設(株)/梶山 隆史・田中 拓也
タスク・アンビエント空調の事例として、燃料電池排熱利用躯体放射空調「T-Radiant Slab(アンビエント空調)」に、人検知制御技術を用いた床吹出しパーソナル空調「T-PersonalAir Ⅲ(タスク空調)」の組合せで構成されるシステムの概要とその運用状況を紹介する。
■タスクデスクの開発/(株)三菱地所設計/羽鳥 大輔・平須賀 信洋・加藤 駿
オフィス執務者に個々に冷暖房できるタスク空調デスクを開発し、実在ビルにおいて実証中である。(1)接触式(机の天板を冷却)、(2)対流式(冷水コイル経由の冷風をリニアに調整可)、(3)輻射式(机の天板裏の輻射パネルで大腿部に冷温輻射)の機能を備えている。
■タスクアンドアンビエント一体型空調吹出口/空調技研工業(株)/中島 洋一
アンビエント域の室内制御を担う拡散性気流のための吹出口と、個人の温冷感に応じてタスク気流を形成する吹出口を組み合わせることで、ヒューマンファクターを考慮した快適性・知的生産性の向上と省エネを両立できる。
●床吹出し空調システム/日比谷総合設備(株)/泉山 浩郎
床吹出し空調方式は、吹出口が重要で、手動で開口面積を変更できるものから、形状記憶合金を用いて開度制御するもの、床面全体を通気性カーペットで覆い空調空気を浸みだすものなどがあるが、本稿ではファンを内蔵したファンユニット式の吹出口について紹介する。
●IoT時代におけるビルマネジメント/(株)NTTファシリティーズ/河野 正人
ITの発展は、人々だけでなくビルにも大きな影響を与えてきた。、IoT 時代の到来により、管理対象の多様化、情報量の拡大が予想され、従来では取得することが困難であったビル内の位置情報などの情報が活用されはじめている。本稿では、位置検知方法や利用例を紹介する。
●快適な室内環境構築に向けたIoT活用に関する取り組み/清水建設(株)/雨宮 沙耶・廣瀬 啓一
温湿度や光などの環境情報だけでなく、今までは経験的に得られていた動線やスペースなど「場」の使われ方、「ヒト」「モノ」の状態など、多種多様なセンサを使ってモニタリングを行うことが可能となってきた。その取り組み事例の一部を紹介する。
●環境解析モデル作成支援システム「T-BIM REnvironment」/大成建設(株)/浜田 由記子・佐藤 大樹
BIMデータから異なる環境解析に共通で利用可能な3次元解析モデルを生成する技術(T-BIM Environment)を開発した。詳細形状を素早くモデリングでき、環境解析間のモデル不整合も解消される。これによりBIMと各種環境解析結果の融合表現や環境要素間のトレードオフ把握が効率化し、顧客と設計者との合意形成が促進される。
●空調省エネ最適化制御システム「OHSaver」/㈱日立プラントサービス/大島 昇・前山 昭/(株)日立製作所/菊池宏成
「OHSaver」は、熱源を主体とする空調システム全体の消費エネルギー等を最適化、最小化する制御システムである。室温を変動させずに冷水温度、冷却水温度、流量等を変動させて冷凍機を含む空調全体のエネルギーを最小化するため、快適性との両立が可能である。本システムは、2016年度空気調和・衛生工学会技術賞を受賞した「あべのハルカス」にも導入されており、その実証結果及び今後の活用展開について報告する。
●既存建物の不快な床振動を低減する制振技術「SPADA-Floor」/(株)竹中工務店/松下 仁士
既存建物での床振動問題が増加傾向にある背景を受けて、使用中の建物にも比較的容易に適用可能な床制振技術を開発した。振動センサーと鉄骨梁の両端部に配置した小型・軽量のアクチュエータを用いて床振動を制御する、アクティブ床制振技術である。
●ANSYS Fluentを用いた室内の温熱快適性解析について/アンシス・ジャパン(株)/藤井 明
室内の人間が快適と感じるか否かに関しては、温度だけでなく湿度、風速、輻射温度など人間の感覚に関する様々な要素が影響する複雑な問題である。本稿で3次元のシミュレーションを用いて評価する方法、特に熱流れ解析ソフトであるANSYS Fluentを用いた解析手法について紹介する。
●「厨房換気最適制御システム」の開発/新日本空調㈱/高橋 理・松本 啓一・田村 稔・長山 広勝
厨房換気の省エネ施策として、厨房機器の使用負荷率に応じて換気風量を増減する換気制御を導入した。導入後1年間の運転を行い、その実測結果からエネルギー削減量やランニングコストの分析を行った結果を報告する。
●室温スウィングで省エネと快適性を両立/新日本空調(株)/高木 正尚
当社と㈱東芝が共同で開発した、室温を上下にスウィングさせることで快適性を保ちながら冷房時の省エネを実現する空調制御手法「アクティブスウィング」について、その概要と有効性の実証試験結果について紹介する。
●非常用発電装置におけるBCP対策用フィルタ「南風」について/鹿児島大学/門 久義
東日本大震災が与えた教訓に基づき、BCP 事業継続計画の積極的推進活動が始まっており、企業等は地震、津波、風水害、火山噴火などへの災害対策に本格的に取り組むことが求められている。プレフィルタ「南風」は、鹿児島の桜島火山降灰対策として開発されたもので、その性能試験の結果を紹介する。
●快適環境づくりに貢献するエアーカーテン/三菱電機(株)/本田 春雄
当社の機種ラインアップは、業務用、産業用の2種類あり、各用途において室内外温度差、遮断高さ、開口部幅から機種選定できるような機種ラインアップを揃えている。その機種選定や基本性能、さまざまな技術、事例、特長について簡単に紹介する。
●オフィスの省エネ性と快適性を両立する「CEILINGFREE」/ダイダン(株)/北野 雅士・山田 正也
ZEB化達成には照明・空調エネルギーの削減が必要となる。しかし、重要なのはエネルギー消費削減と共に快適な室内環境を維持することである。本稿では、省エネルギーでありながらも快適性を両立する設備一体型ユニット「CEILINGFREE」の概要について紹介する。
●新マンションエアロテック実証実験に着手 /(株)メックecoライフ/子安 誠
三菱地所グループでは戸建住宅において、快適・健康・省エネを実現する24時間全館空調システム「エアロテック」を開発し、20年以上の実績を積み重ねている。今回一般的なマンションにおいてもエアロテックの導入を可能とするため、ダクトレス全館空調システムを採用し、一般的なマンションでの普及を目指す。その概要を紹介する。
●建物利用者を快適空間に個別誘導するアプリ/(株)大林組/赤川 宏幸・井口 雄太
屋外空間の快適性評価は、気象条件等の客観的指標を用いることが多く、利用者側の状況を個別に反映しておらず課題がある。そこで、利用者の空間へのニーズを生体情報や環境条件などからリアルタイムに評価し、その利用者にとって最適な空間での過ごし方を提案する個別誘導アプリを開発した。
●分速1,230mの超高速エレベーター技術/三菱電機(株)/坂野 裕一・佐久間 洋一
世界規模での建物の高層化に伴い、エレベーターの高速化による輸送効率向上が求められる。分速1,230mの高速エレベーターを製品化開発、客先納入したため実現可能とした要素技術について紹介する。
●空調機用ドレントラップに求められる機能について/コンドーFRP工業(株)/西本 愼吾
空調機用ドレントラップの設置に際しては、他の機器排水用トラップとは異なる点があるので注意が必要である。本稿では特に注意すべき点と、施工及び点検・清掃の容易な空調機用フロートボール式トラップを紹介する。"
●換気空調制御のためのCO2温度・湿度トランスミッタ/(株)サカキコーポレーション/松本 恭一
換気空調による室内空気環境の最適化は作業効率などの面やウィルスなどの予防に不可欠である。その為の換気空調で必要なCO2、温度、湿度制御のためのスウェーデンのSenseAir社のCO2トランスミッタ、イタリアのDeltaOHM社の温湿度トランスミッタを紹介する。
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