原子力発電所、原子力関連施設、あるいは放射性物質や未知の微生物を取り扱う研究所の換気空調設備は、所内の温度環境を保つと共に、施設外地域への汚染物の拡散防止にも重要な役割を担っています。 本解析手法で作成された解析プログラムは、定常状態、および動的状態(送風機の発停、自動制御、室容積、入熱等)をそのパラメータとして持っており、事故解析を始め、試運転における送排風機の発停時間の設定、自動制御における比例帯や微分時間、積分時間の設定を変えたシミュレーションも行えるので試運転の合理化にも大きく寄与できるはずです。
本書で説明している「抵抗マトリックスで解く換気空調系の解析プログラム」のコード名を「PAVACS」*と呼ぶ事とにします。PAVACSの技術的基盤はベルヌーイの定理であり、換気空調設備においては基本的定理でありますが、抵抗マトリックスを用いて系全体で解析しています。マトリックス
による解析は構造力学のトラス問題や、電気回路設計、あるいは有限要素法などに広く用いられている手法です。その解析の基本は、相互に及ぼし合う影響の大きい範囲全体をマトリックスとベクトルとで連立方程式を表現し、境界条件を与え、その系全体で解析します。 より具体的に述べますと流量ベクトルを抵抗マトリックスと差圧ベクトルとの積で方程式を立て、境界条件を与えて解析します。 マトリックスとベクトルとで表現された連立方程式は、その解析問題によって線形のものと非線形のものとに分かれます。線形問題は容易に解が求まります。非線形問題では初期値と呼ばれるおおよその解を予め与えて求めますが、初期値によっては発散したりして解が求まらないこともあります。 本書で扱う流路系の圧力・流量問題は非線形問題であり、解を求めるためには、ある程度の習熟度が 必要とされます。
* Pressure Analysis for Ventilation and Air-Conditioning System
注) 開発当初は、本プログラム名をDYNAと称していました。
PAVACS 及び同解説書は、1991年度にはおおむね完成しました。この時期はまだ単位は重量単位系でしたので本書はこの単位系で書かれています。
1993年11月に新・計量法が施行され、単位系が重量単位からSI単位に変更されましたので少し読みにくいと思いますが、アルゴリズムの理解には余り支障はありません。その点は事前にご了承願います。なお、添付資料1には本書記載の各方程式の単位系の対比を載せています。添付資料2には、PAVACSのソルバーにフローシートを載せています。
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